今月の法話

■「少しずつ」【2026年2月の法話】

 

 二月になりました。冬の寒さはまだ厳しく、朝の空気もひんやりしています。新年が明けて一月が過ぎ、早くも節分の季節を迎えます。春を待つこの時期は、どこか気持ちが停滞し、「今年こそ」と思った抱負も少し色あせてくる頃かもしれません。張り切るほどでもなく、かといってやめるわけでもない――そんな二月らしい心持ちを、多くの方が感じておられることでしょう。

 迷いの心や煩悩は、そう簡単に断ち切れるものではありません。「また同じことを繰り返してしまった」「結局変われないな」と思うこともあります。仏教では、私たちの心は一瞬一瞬、生まれては消えていると説かれます。これを刹那滅といいます。変われない自分が続いているように見えても、実はそのたびごとに新しい心が生まれています。だからこそ、今日ほんの少しでも善い方角へ向きなおす心が、長い修行の道、そして仏の道につながっていくのです。

 早朝の境内は、まだ寒空の下にありますが、枝の先には小さな芽が見えます。誰に見せるでもなく、人知れず少しずつ育っています。蕾には、無理をせず、ただ自分の時を生きる素直さがあります。私たちの心も、あの芽と同じように、すぐには変わらなくても、確かに育っているのです。

 二月の朝、少し立ち止まり、深呼吸をして自分の心を見つめてみましょう。「まだまだ変われないな」と思う気持ちも、そのまま認めてよいのです。その上で、今日できる小さな一歩を踏み出す。それだけで十分です。小さな一歩が、また次の一歩を呼び、心を少しずつ、しかし確実に育ててくれます。

 当山の木々も、冬の寒さに耐えながら春を待っています。寒さの中で芽を伸ばす木々のように、私たちの心も少しずつ育っていきます。二月の良き日々を、自分の心で観じながら、善い心をもって「少しずつ」前に進んでまいりましょう。

合掌

(中本 晴拜)

 

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