今月の法話
■「あたりまえではない感謝のこころ」【2025年2月の法話】
二〇二五年も一か月が過ぎ去りました。個人的には年末からあっという間にすぎさった気がしております。振り返りますと、十二月三日には先代裕信大和尚の二十七回忌法要が、十二月二十一日には厳島御室会館の落慶法要が勤修されました。年末の大掃除を終え、お正月を迎えると新年の初詣の参拝者の御祈祷、星まつりの準備に修法、節分会の準備であっという間に二月を迎えた気が致します。慌ただしく過ごす中で、嬉しいこともあれば、悲しいこともあり、密度の濃い時間となりました。
嬉しいことを申しますと、昨年の節分後から工事が始まりました旧信徒会館が厳島御室会館と名を改め、この度完成致しました。工事に携わっていただきました皆様の真摯なお仕事、お正月までに間に合わせてほしいというこちらの都合にも、いつも笑顔で、一生懸命に対応してくださいました。途中、試掘調査や、天候に左右される作業など工程に関して、人力ではどうにもこうにもいかないもありましたがお大師様のお力かなんとか予定通りに無事落慶式を迎えることができました。檜や井草の新しい香り漂う素敵な癒しの空間を作っていただくことができたと思いますので、是非皆様お参りの際には厳島御室会館で、休憩されたり、写経や腕輪念珠づくり体験などをされてください。
悲しいことは当山に奉職しておりました当山住職の弟子にあたります三松庸裕和尚が遷化致しました。年末に顔色が悪く、病院に行ってもらったところ、持病の癌が進行し、手の施しようがないところまで進んでしまっておりました。年の瀬にはご家族から「もう年を越せられないかもしれない」と急報をいただき、急ぎ住職とお見舞いに行きました。弥山が一望できる部屋に入院させていただいており、毎日、三鬼さんのご真言を唱えて、三鬼さんに縋るしかないねという話をしました。ご縁のあった皆様のお見舞いもあり、本人の気力で、一月十九日まで過ごすことができたのだと思います。十九日の明朝に訃報の連絡を受け、その晩にはお通夜、翌二十日に御葬儀を執り行わせていただきました。当山の職員、関係者、宮島でご縁をいただいた方々や懐かしいお顔や遠方より駆けつけてくださった方々など、多くの参列者に見舞われて、幸せな葬儀になったのではないかと思います。弥山に天狗となって戻ってくると言って旅立った庸裕師が得意だった法螺貝も弥山三鬼堂に置いておくことにしました。
お寺にいると日々様々な出来事があります。嬉しいお話や悲しいお話が届きます。その都度様々なことを感じ、学ばせていただいておりますが、私たちが無事で、大きな難がなく過ごせることだけで十分有難いと思います。今年もお大師さんや三鬼さん、境内の神仏のおかげを受けながら、一年を無事に過ごしたいと思います。
南無大師遍照金剛。南無三鬼大権現おんあらたんのううんそうか。
(吉田 大裕)