今月の法話
■「暑さと安らぎ」【2024年9月の法話】
九月に入りましたが、夏の暑さがまだまだ長引いております。暑さが厳しいと、心も体も疲れやすくなります。日本の四季の気候が、まるで二季といわんばかりに気候が年々変わっていっております。
さて、今月は春と秋と年に二回ある「彼岸」を迎えます。彼岸とは、彼岸(ご先祖様のいる世界)と此岸(私たちが生きている世界)が最も近づく日とされ、ご先祖様をより近い距離でご供養するとともに、自分自身も悟りの境地である彼岸へ到達するために修行を行うという意味合いもあります。彼岸は合計七日ありますが、中日は先祖に感謝し、残る六日は、悟りの境地に達するのに必要な六つの徳目「六波羅蜜」を一日に一つずつ修める日とされています。
六波羅蜜と呼ばれる六つの善行。その中でも忍辱(忍耐)というのがありますが、こうも暑い日が続くと、いくら「修行だ」とも言えど、心身共に疲弊していたり、自分に余裕がなかったりすると、なかなか忍耐することは難しいものです。時期が秋になるにつれて、涼しさを感じるようになると、私たちの心にも自然と安らぎが訪れます。この彼岸の時期こそ、少し心を静め、自分自身や周囲の人々に感謝し、安らぎを感じることが大切です。
彼岸は、先祖を供養するだけでなく、自分の心を見つめ直し、日々の生活にも感謝の気持を持つための期間でもあります。例えば、朝の一杯のお茶やコーヒーを味わい、何気ない時間を楽しむ事で、安らぎを感じそんな小さな瞬間に感謝し、心の平和を育むことが彼岸の精神に通ずるものです。また彼岸の時期は、ご先祖様に感謝の心をもってお参りしますとともに、生きている私たちも、少し心を休め、自分自身や周囲に対しても感謝の気持ちをもつことで心に安らぎを見つけることができるでしょう。この九月、彼岸の期間を利用して日常生活の中で、心静かに過していただきたいと思います。涼しさと共に訪れる時間を大切にし、心豊かな日々を送ってみてはいかがでしょう。
(三松 庸裕)