今月の法話

■「いかせ生命(いのち)」【2023年3月の法話】

 

 先月京都に向かっている車内で一本の電話が鳴りました。私が生まれるずっと前から当山でお世話になっていたお寺のご住職さんが遷化されたというお電話でした。ついその一週間前に電話でお話をさせてもらったのですが、その電話が最後の会話になるなんて思ってもおりませんでした。

 京都から急遽戻り、葬儀に参列させていただきました。私が僧侶になってからも色々と教えて頂きました。面倒見のいい方でしたので、もっとこれからも教えて頂きたいことがたくさんあり、訃報を聞いた際には突然のことで、本当に信じられない気持ちになりました。出棺の際に棺を担がせて頂きましたが、ご院家さんから教えて頂いたことを思い出しながら、お見送りさせていただきました。

 片付けも終わり、お寺に戻ってきて夕ご飯を家族と食べておりますと、次の電話が鳴りました。またしても近くのお世話になっていたお寺さんの訃報でした。こちらのご住職さんもいつも出仕していただいておりましたのと、まだ五十歳と若く、いつもお元気な姿しか見ておりませんでしたので、こちらもかなりの驚きとショックを受けました。

 お通夜と葬儀のお手伝いをさせて頂きながら、弔問に来られる方々とお話させて頂いても、あまりに早く、惜しい方が遷化されてしまったと思いました。

 私たちはいつも生活ができていることが当たり前になっていますが、このあまりに突然なお二人との別れに改めて諸行無常といのちのはかなさを感じました。

 命には限りがありますし、いつかは人間必ず終わりを迎えます。いつ来るかわからないその時までに自分はこの頂いた命をどのように活かせるのか。どのように最後を迎えるのかが大切です。また、いつでもあの人に会えると思っていてもその時が最後になるなんて誰も想像ができませんし、次がいつあるのかもわかりません。この一時を大切に、全力で向き合わなければ後悔することになりかねません。現代は技術の進歩により、便利になり、生活することが当たり前になりつつあります。特に目的がなくても、一日をなんとなく過ごすことは可能です。しかし、せっかく平等に頂いた命ですから、有限ないのちを最大限に活かし、光輝かして頂きたいと思います。

 どのような人生を送ってきたかその人のお葬式を見るとわかります。皆さんが別れを惜しんでくれるというのは幸せなことだとこの度感じました。人に愛される人はその何倍も人に愛を持って接してこられたのだと思います。弘法大師空海さんも「済世利人」と利他行をすることで私たちは功徳を積むことができるといわれております。今月はお彼岸を迎えます。是非とも皆様も今一度ご自身の人生を振り返って頂き、ご先祖様から頂いた命を大切にし、今の瞬間、瞬間を大切に生きて頂きたいと思います。

合掌

(吉田 大裕)

 

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