今月の法話
■「ありがたさに気づく」【2022年11月の法話】
十一月が始まりました。先月の十月は衣替えの季節でした。衣替えの起源は宮中行事「更衣」といい、平安時代から続いており、江戸時代には武士、農民へとひろがりました。
昔とは違い、現代では様々な衣服があり、特殊な繊維もあります。暖かい時期には発汗性がたかい素材が使われ、秋や冬などの寒い季節には軽くて保温性のたかい素材がつかわれます。エアリズムやヒートテックなどです。
身に着ける服や繊維に違いがあっても、「行事」から始まった衣替えの習慣が変わることはありません。それは私たちがその季節を快適に過ごす為だからではないでしょうか。
春から一年を通じて変化の少なかった人々の着物に、四季折々の趣向や快適性が織り込まれ、とても快適に過ごせる様になり、生活が豊かになっていきました。
また、日本の食文化では、実りの秋、食欲の秋という言葉がありますが、収穫で一番に思い浮かべるのが「お米」ではないでしょうか。長い年月をかけ、改良に改良を続け大勢の人を賄える、病気や害虫に強く美味しいお米ができあがりました。
普段私たちが何気なく手にする物や、口にするもの、そこには昔より引き継がれてきた、多くの努力や探究心が詰め込まれています。当たり前にそれを手にし、口にできる私たちはとても幸せなことだと思います。
しかしそんな中、私たちはいろいろなものを疎かにしてしまいます。何かをしながら食べる「ながら食べ」肘を付いて食べる、スマホを触りながら食べるなど、常に身の周りに食べ物が有って、服が有って、雨風凌げる家が有って、当たり前になってしまっている様な気がします。自分自身もしっかり謙虚になって考えていかねばならないと思います。
毎日が忙しく、心に余裕が無く時間が無い時も有るかとおもいますが、衣替と同時に心もリセットし、自然の中に生かされていると感謝しながら自分を見つめ直していきましょう。
(大﨑 希範)