今月の法話

■「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」【2021年2月の法話】

 

 先月一月八日~十四日まで京都教王護国寺(東寺)にて行われました後七日御修法に承仕(じょうじ)として出仕させて頂きました。

 後七日御修法とは毎年一月八日~十四日までの一週間東寺で行われている真言宗最高の大法です。国家の安泰と天皇陛下を中心として日本国民の繁栄(玉体安穏、鎮護国家、五穀豊穣、万民豊楽)を祈念します。弘法大師空海は唐に渡った際に不空三蔵が唐の皇帝の為に修法された例にならって、わが国でも是非にと朝廷に進言せられまして承和元年(八三四年)に仁明天皇の勅令により、大内裏の中務省(なかつかさしょう)を道場として始行しました。

 以来、勅許を得て翌年(八三五年)から明治維新(一八六八年)まで宮中真言院にて「宮中真言院後七日御修法」として行われておりました。明治十六年(一八八三年)に再興されてからは道場を東寺の灌頂院に移し、以後真言宗各派、各本山が協力して修法されております。

 真言宗には大きく分けまして十八の本山がございます。よくお耳にされるのは真言宗高野山派や醍醐派、大覚寺派などかもしれません。当山は仁和寺を総本山とする御室派です。各本山の管長もしくは真言宗全体で任命された高僧の方々十五名がご出仕され、道場内で一日三座×一週間、計二十一座の修法を行い、熱祷されます。初日には御所から勅使の方が天皇陛下の御衣を持参され、私たちはこれを受け取り、大阿闍梨様の御前にて毎座御加持させていただいた後、最終日の結願の座の後に勅使の方に奉還し、天皇陛下のもとへと渡っていきます。

 私たち承仕は法要が滞りなく進むよう、準備片付け、高僧方の修法のお手伝いを行います。一座一座、天皇陛下始め、日本国民の皆さまが安穏に暮らせるよう一願となって祈願する法要ともなるとその準備には只ならぬ重圧と緊張感がのしかかって参りました。

 最後の一座を終え、御衣を入れた唐櫃を、一同が行列を組み、大師様がいらっしゃる大師堂まで運ぶ際には重責からの解放感とこのコロナ禍の中、無事に今年もお勤めを果たせたことへの感謝の気持ちに満たされました。

 例年でしたら、十四日の結願の座のあとには、一般の皆さまにも道場内をお参り頂ける「後拝み(あとおがみ)」がございますが、今年はコロナ禍の為、実施されませんでした。

 いずれ落ち着きましたら、皆様とも一緒に一月十四日に東寺の後拝みに一緒にお参りさせて頂きたいものです。改めて祈りの心の清浄さを実感させて頂きました。

合掌

(吉田 大裕)

 

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