今月の法話

■「四 恩(しおん)」【2020年1月の法話】

 

 あけましておめでとうございます。

 今年の干支は「庚子(かのえ・ね)」です。十二支の一番目とされ、元々は「孳(し)」という字が使われていました。これは「増える」という意味があり、新しい生命が種の中で芽生え始める状態を指し、全ての始まりと未来への可能性を秘めています。なので子年を象徴する動物が「ねずみ」なのは、たくさんの子どもを生むことから子孫繫栄の意味が込められているからとされています。

 さて「四恩」とは、「恩を受けていると考えられるもの」を四種類に分類したもので「父母の恩、衆生の恩、国王の恩、三宝の恩」に分けられます。「父母の恩」とは、自分自身がこの世に生存している原点への恩です。「衆生の恩」とは、祖父母、親戚、友人など、周りの人たちとの支え合いがあってこそ今の自分があることへの恩です。「国王の恩」とは、私たちがこうして平和な生活が出来ているのは、国家と国家の調和がとれていることへの恩です。そして「三宝の恩」とは、神様・仏様が平安を願うことへの恩です。

 ここで私事になりますが、仁和寺の修行道場で僧侶の修行を終えて間もなく一年になります。修行に入った当初は、焦りや苛立ちから独りよがりの行動も多く周りの者に迷惑をかけていました。その度に仲間から注意され、反省していました。「迷惑をかけた分を返すにはどうしたら良いのか」、「今の私に出来ることはないのか」ということを考えながら、前を見ながら行動し、仲間たち同じ歩調で歩いていきました。なので私が無事に修行を終えることができたのは、周りの人に助けられたからです。人の話を聞かずに進んでいればどこかで脱落していたように思います。こうして修行を終えたことへ感謝しています。

 私たちは、自分が思っている以上に家族、友人、会社の同僚など、多く方々と支え合って生きています。それが当たり前に思えるかもしれません。でも何かをきっかけにその関係が崩れることもあります。周りの方々と感謝し合い、敬意を払い合っているから今の自分があるのではないでしょうか?そこを忘れないように気を付けていきましょう。

 本年も皆様にとって良い一年でありますように。今年もよろしくお願い申し上げます。

合掌

(道正元裕)

 

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