今月の法話
■「足るを知る」【2019年8月の法話】
人は誰でも「豊かになりたい」と思っています。しかしそこで大事になってくるのは「何をもって豊かとするか」という事ではないでしょうか。もし、「あなたは豊かですか?」と聞かれたらどう答えますか?
世間的には、「豊か=お金持ち」という解釈の方がほとんどと思います。贅沢なくらしをするのに十分なお金、家、車、ごちそうを食べられる。それを「豊か」と感じていても、レベルの違うそれ以上の贅沢をしている大富豪が現れると「もっと、もっと」「さらに、さらに」と思ってしまいます。
しかしその一方で、職が見つからず、家族が食うや食わずの生活をしていた方が、幸運にも仕事が見つかり、家族が暮らしていけるだけの収入を得ることができる様になったとしたらどうでしょうか。きっと「私たちも豊かな生活ができる様になった」と感じるのではないでしょうか。
もちろんそれ以外にも「心穏やかにいられる事」「ゆったりとした時間を過ごせる事」「愛する人と一緒にいられる事」などを「豊かである」と感じる人もいるでしょう。つまり「豊か」とは個々の心の中にあるものであって決まった形はないものだと思います。
仏教では「知足」をとても大事にしています。「足(た)るを知る」とはお釈迦様の直説でもあります。どんな暮らしをしていても「今が十分だ」「今の暮らしでありがたい」と、今を感謝できる事が「足るを知る」という事です。
お釈迦様は、「欲が多い人ほど苦悩を背負うもの、足るを知るものは心の豊かさを感じる事ができる」と説いています。まさに「豊かさ」とは人の心次第という事です。求めれば苦悩も一緒についてきますし、求める事を捨てれば心豊かになれる。みなさんも足るを知ることで、心豊かに暮らしていきたいものですね。
合掌
(三松庸裕)