今月の法話
■「無財の七施 和顔施(わがんせ)」【2019年10月の法話】
暑さも少し落ち着き、いよいよ秋の季節がやってまいりました。秋といえば、芸術の秋、食の秋、読書の秋、スポーツの秋と言います。過ごしやすい気候になり様々なことに前向きに取り組みやすい季節ではないかと思います。
私は特にスポーツが大好きでございます。体を動かすことも好きですし、見るのも大好きです。一緒に熱くなったり、涙を流したり、色々なドラマがあり、一喜一憂しながら見ております。
少し前の話になりますが、隣県の岡山から新たなスターが誕生致しました。八月の全英オープンゴルフで見事四十二年ぶりに日本人女王に輝きました渋野日向子さんです。まだ若干二十歳だそうです。二十歳で世界制覇ということだけでも凄いことですね。ついこの前まで、自分より年上、もしくは同学年くらいの選手が活躍していたと思うのですが、気が付けばいつの間にか自分より年下の年代が活躍する年になっておりました。歳月流るる如しとはこのことのようです。若干二十歳の彼女が有名になったのは優勝したこともそうですが、「笑顔」が素敵ということで「スマイルシンデレラ」と呼ばれ、一躍有名になりました。いつも「笑顔」でいることを心掛け、周りの皆も幸せに感じさせる彼女のスマイルは本当に素敵だなと私も感心致しておりました。
前置きが長くなりましたがこの「笑顔」というものは仏教でも誰でもできる大切なことの一つとして言われております。「無財の七施(むざいのしちせ)」と言いまして、私たちがお金や資財をはたかなくてもできる七つの行いのことです。その一つが「和顔施(わがんせ)」です。字の名の通り和やかな顔の施し、つまり周りの人に笑顔や優しい顔で接してあげるということです。いつも笑顔でいるということは簡単なことではありません。私たちは三毒という「愚かな心、貪りの心、怒りの心」を持っています。その心を静め、周りの人に笑顔を振りまくというのは常日頃から心掛けておく必要があります。彼女もなるべく笑顔でいるように心がけているとインタビューで答えていました。
〈無財の七施〉
眼施(がんせ)
常に優しい眼差しを施すこと
和顔施(わがんせ)
いつも笑顔で接すること
言辞施(ごんじせ)
優しく時には厳しく叱る愛情のこもった言葉
身施(しんせ)
自身の体を使い奉仕すること
心施(しんせ)
心配り・気配り、思いやりの心を持つこと
床座施(しょうざせ)
座席や場所、地位を譲ること
房舎施(ぼうしゃせ)
家や部屋を提供すること
これら全てを行うことは簡単なことではありませんが、そのための日々修行なのです。
これらのことが進んでできるよう心の修練をしましょう。
(吉田大裕)