今月の法話
■「優しい風が吹く」【2020年9月の法話】
今年も暑い八月が過ぎました。暦の上では立秋を過ぎれば「秋」ですが、日本各地で連日のように記録的な猛暑が続き、まだまだ残暑厳しい日が続いております。
三鬼大権現さまの御祈祷に来られる皆さまにも、弥山祈祷所三鬼堂へはもちろん、本坊祈祷所摩尼殿へも暑いなかをお参りいただいております。三鬼さんに直接お参りするには、どうしても階段を登らなければなりません。皆さん、この季節は汗を流してお参りに来られます。私達も汗を流しての御祈祷となります。
三鬼大権現さまの御祈祷をしていると、どんなに暑い日であっても、たとえそれまで無風状態であったとしても、御祈祷の後半、般若心経や三鬼大権現ご真言をお唱えするあたりで、ふわっと心地よい風が吹き込んでくることが多々あります。これは弥山であっても本坊であっても同じです。実際、ご参拝の皆さんも感じておられることと思います。
以前読んだ本に『ガチガチにお願いばかりするような気持ちで手を合わせてお参りをしていると、神様であってもそこを通り抜けることができない。肩の力を抜いて感謝の気持ちで優しく手を合わせてお参りすると、そこを神様がすぅっと通るのだ』ということが書かれていました。三鬼さんの御祈祷において吹く風も、きっと同じだと思います。皆さんの感謝の気持ちに三鬼さんがお応えくださっている風なのです。（もちろん、時にはお叱りの風も吹くのだと思いますが。）
神仏の存在というのは、にわかには信じがたいという人もなかにはいるでしょう。また、どんなに神仏にお参りをしていたとしても、「なんで」と悩み苦しみ、凝り固まった気持ちでいると、なかなか感謝の気持ちは生じてこないでしょう。しかし、神仏のご宝前で感謝の気持ちの大切さを教えてくれるかの如く心地よい風がふと吹いたなら、素直に『ありがたい』という気持ちが自然と涌いてくるはずです。その時には、神仏を身近に感じているはずです。神仏が身近におられることに気付くはずです。
神仏の前では、まず素直であるべきです。素直に感謝の気持ちで手を合わせるのです。悩みや苦しみがあったとしても神仏にはまず感謝の気持ちでお参りする、感謝の気持ちが生じれば悩みや苦しみも和らいでくる。そこには風が吹く。念念勿生疑の心で、感謝の気持ちでお参りをすれば、必ずや三鬼さんはお応えくださるのです。
(日高 誠道)