今月の法話

■「心の灯び」【2020年10月の法話】

 

 九月十一日~十三日まで宮島ローソク祭り萬燈会を開催させていただきました。今年はコロナウイルス感染防止対策の為、例年とは少し違う形となりました。

 毎年萬燈会の日を迎えますと、真っ暗な境内に浮かび上がるろうそくの火を見つめながら、コンサートの音色に耳を傾け、世界平和を祈ります。

 世界平和を祈るために始めた萬燈会も年々増える災害や悲しい事件、今年に関しては新型コロナウイルス感染症も加わり、一層祈りを捧げなくてはと思います。

 先日の萬燈会初日の弥山倶楽部世界平和コンサートで歌手のMACOの歌声を久しぶりに拝聴致しました。MACOさんには二〇〇六年の弥山開創一二〇〇年記念事業の際に、弥山と消えずの火をテーマとした曲「時空のおくりもの」を歌ってくださっています。その歌詞の中に「一二〇〇年もの時の中で繰り返す喜びや悲しみを包み込んだ祈りの火」というフレーズがあります。

 私たちは長い長い歴史の中でいい時もあれば、悪い時もあり、苦楽と共に過ごしてきました。数々の困難を我々人類は悩み、考え、智慧を絞り、生きぬいてきたのです。もちろん「もうだめだ」と諦めてしまったり、挫けてしまったりすることもあったと思います。

 ろうそくの火も我々の心も同じです。火は一度着くと頑張って点き続けようとします。ただ、消えるのも一瞬です。雨、風で消えそうになることもありますが、消えずに耐えたろうそくの火はより綺麗で逞しい、素敵な炎になります。

 今年、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、多くの皆さまが悩まれ、大変な思いをされたのではないかと思います。長い人生の中で、様々なことが私達の心に波をたたせてくれます。そして、この波は生じては滅し、滅しては生じを繰り返します。今年やってきたコロナウイルス禍も我々の心に様々な波をたててくれました。しかし、これもいずれ落ち着きます。またいずれ別の波もやってくると思います。その都度、私たちはその波と戦い、鎮めてきたのです。だんだん慣れてくると波も立ちにくくなってきます。

 我々の心は弱く、都合のいいように考え、楽なほうを選びがちです。しっかりと向き合い、律し、精進していくしかありません。長い人生の中では、今回のような大きな波がまた来るかもしれません。何があるかわからないのが人生です。

 時には小さくなる時もあるかもしれませんが、「消えずの火」のように私たちは心の火を絶やすことなく、しっかり前を向いて、歩みを進めていきたいと思います。仏さまのひかりが皆様の心に届き、輝かせてくれますように。

合掌

(吉田大裕)

 

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