今月の法話
■「梅雨空や 心の重さ 空に解け」【2024年6月の法話】
六月に入り、紫陽花が美しく咲く季節になりました。この花の豊かな色彩と形は、変化に富んでおり、まるで人生の多様性を象徴しているかのようです。人生は旅のようなもの。この旅で、私たちは多くの「荷物」を背負っています。愛情、仕事、楽しみ、夢など、さまざまな荷物です。しかし、この荷物の中には、悩み、悲しみ、恐れなど、私たちの心を重くし、疲れさせるものもあります。心の荷物を軽くする方法が、仏教の教えの中にあります。
まず、「無常を受け入れる」ことが重要です。全てのものは常に変化し続け、永遠に不変なものはありません。どんなに立派な建物でもやがては朽ちて無くなります。私たちの体もどんどん老いていきます。喜びも悲しみも、やがては過ぎ去り無くなります。これが「無常」の考え方です。そう思えれば、現在抱えている悩みや恐れも、いつかは過ぎ去るという希望が持てるはずです。
次に、「慈悲の心を育む」ことです。例えば、ボランティア活動に参加してみたり、友達や家族の悩みに寄り添ってあげたりすることです。誰かの喜びや苦しみに共感し、手を差し伸べる心が、自分自身の苦しみや孤独感を軽くするのです。
そして、「煩悩から解放される」ことです。私たちの苦しみの根源は「煩悩」にあります。特に“三毒”(むさぼる欲、怒り、無知と愚かさ)の煩悩です。食事をイメージするとわかりやすいです。もっと食べたい!私の量が少ない!こんなのは食べたくない!などの気持ちです。現在持っているものに対する感謝を深め、「もっと欲しい」という考えに囚われないようにしましょう。他人を理解して共感することを深め、感情に流されないようにしましょう。そして、周りの世界と自己の内側を深く理解し感謝ようと心がけましょう。
仏教の教えは、私たちが日常生活で実践的にできるものばかりです。私自信も、不満が出たり心が苦しく感じたりした時は、いつもこれらの教えを思い出す様にしています。心の荷物を軽くすることは、一夜にして達成できるものではありません。しかし、日々の小さな努力を積み重ねることで、少しずつ荷物を減らしていけばよいと思います。自分が続けられる範囲で無理せず、これを「精進」と呼ぶのです。
仏教の教えに耳を傾け、少しずつ軽やかな心で生きましょう。自分と他人、そして世界への理解と慈悲を深めながら、安心を求める人生の旅を続けていきましょう。
(小西崚弘)