今月の法話

■「伝」【2024年4月の法話】

 

 日々生活している中で、家族や友人、職場の人など沢山の人々と接していると思います。その日常の中で交わされる数多くのコミュニケーションの中で、意見の食い違いや認識の違い、またそれらが原因となり喧嘩や関係の悪化など、、、ありがちな話ではないでしょうか。

 近頃、テレビや週刊誌などにおいて事実と異なったり、反する内容を報道しているのを多々目にします。こうした事は、それを見た人から人へと伝わり、やがてその噂話さえも事実とかけ離れた内容になって大きな問題となっていることがよくあります。これは報道機関がその影響力が大きいというだけであり、私たちの何気ない会話でもありうる事です。

 自分から、他人へ物事を伝えるというのは簡単な様に見えて、とても難しい事だと思います。

 伝えるという漢字である〝伝”の旧字体は傳と書きます。この字は人偏に專を書きますが、まず、袋に中身を詰め込んで紐で縛ったものを「專」といいます。そして、この專という字は「もっぱら」、「一途に」といった意味をもっています。この事から、「伝える」ということは人がひたすらに、一途に行うもの。自分の手で相手へ運んでゆく、そういった意味をもっています。仏教の世界では、師から法(仏様を拝む方法など)を授かることを伝授(でんじゅ)といい、またその中でも特に大事な事は記すのでは無く、口伝えで伝えていくことを口伝(くでん)といっております。書物に書き写して見るのも良いですが、やはり先述した様に、自分の知識、思い、願い、様々なものを自分の言葉という袋に詰めて〝傳える”ことが大事なのです。また、聞き手である相手もそれを真摯に受け止めなければなりません。

 ただでさえ最近ではそういった本来の意味での〝傳える”ことが減ってきているようにも感じます。今一度、家族や友人、身近な大切な人に対して、感謝の気持ちでも何でもいいです。今の元号である〝令和”は、令月(よいつき)と風和(やわらぎ)からきておりますが、自分の本心から気持ち、思いを傳え、皆と「和をせしめ」と解釈するのもいかがでしょうか。

合掌

(江本 康亮)

 

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