今月の法話
■「雛祭り」【2026年3月の法話】
段々と寒さが落ち着き、春の兆しが見える頃となりました。境内に何本かある梅の木も、はや小さい花がいくつも姿を見せています。宮島ではこの春のシーズンに雛巡りと称して町内各所に古くから伝わるお雛さまを展示しています。また近年では“宮島福よせ雛”の名称でひな段に飾られることの無くなったお雛さまを集め、現代風に宮島に伝わるお祭りや行事などを表した展示も行っています。
日本では古くより男の子が生まれると端午の節句(五月)に兜を飾り、武士が身を守る道具であったように、転じて我が子を危機から守る守護の象徴として、また厄除けといった意味合いで飾っております。そして、女の子が生まれると桃の節句(三月)に結婚式を模した豪華な人形を飾ることで、将来の良縁と幸せな家庭環境を祈り、また厄除けとしての意味ももち、飾られています。これら二つの兜や雛人形というのは、どちらにも人型(ひとがた)としての意味合いを強くもっています。
そもそもひな祭りは、古代中国で三月の最初の巳の日に川で身を清める風習があり、これが日本に伝わり草や藁で作った人型を川や海に流す風習と融合しました。雛流しと呼ばれるこの行事は、自分の厄や罪穢れを人型に託し移して流し、身を清めていました。今でも鳥取や奈良などの一部地域で行われています。
近年では核家族化や家のつくりの構造変化によって大きいひな人形を飾る家庭も少なくなってきました。ひな人形を飾る意味、はたまたひな人形というものを知らない世代もこれから増えてくるのではないでしょうか。宗教離れが加速する現代において、こういった身近な古くから伝わる慣習というのは神道や仏教と深く根付いてるものが多く、段々と忘れ去られていき、やがては本来の目的と全く異なるものへと変化していく訳であります。時代とともにかわって行くのも自然の摂理であり、仏教で言うところの諸行無常というわけでもありますが、日本の古き良き文化を少しでも後世に伝えていきたいものです。
(江本 康亮)
